〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局〕
2015年6月26日 6月議会健康福祉委員会(国民健康保険)
【わしの恵子議員】
国保の都道府県化への対応について伺います。今回の通常国会において、2018年度から国民健康保険の財政運営の主体を市町村から都道府県に移す医療保険制度が成立しました。
第1に、2018年度からの実施に向け、県と市町村の役割分担、保険料・税率の設定の検討などが行われると思いますが、国保の都道府県化への県の対応と工程表(ロードマップ)についてお聞きします。
【医務国保課主幹(国保・福祉医療)】
今回の国民健康保険制度改革により、都道府県は国保の財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等、国保運営に中心的な役割を担うこととなる。
具体的な都道府県の対応としては、市町村ごとの国保事業費納付金の額を決定すること、国保安定化基金を設置すること、県内の統一的な国保運営方針を定めていくこと、市町村が担う事務の効率化・標準化・広域化を推進すること、さらに、標準的な算定方法等により、市町村ごとの標準保険料を算定・公表すること、給付に必要な費用を全額市町村に対して支払うこと等が挙げられています。
県としては、新制度開始の前年である平成29年度までに国保運営方針の策定を行うとともに、市町村が納めるべき国保事業費納付金の見込額や市町村が参考とすべき市町村ごとの標準保険料などについては、市町村の予算編成等に支障が生じないよう適切な時期に示してまいりたい。
そのため、国保安定化基金については今年度中に設置したいと考えている。また、国保運営方針の作成等の重要事項を審議するため都道府県に国民健康保険運営協議会を設置することとされているので、平成28年度の設置を考えている。
【わしの恵子議員】
国民健康保険は公的健康保険制度のなかでもっとも加入者が多く、命と健康を守る国民皆保険制度の根幹となっています。調べてみますと、本県においては、自営業者、退職者、非正規労働者などおよそ112万世帯が加入しています。また、2013年度、200万円未満の世帯が72.1%と7割を超えています。
この間、国保の国庫負担金が削減されるなかで、保険料(税)が上がり、加入世帯の負担能力をこえるほど高くなっています。県内では2014年6月時点での滞納世帯は16万6140世帯と、国保加入者世帯の15%を占めています。滞納世帯にたいする「制裁措置」といわれる有効期間の短い短期保険証の発行件数は4万7690世帯。医療機関窓口10割負担の資格証明者発行件数は5577件にのぼっています。
また、国保の対象であるのに、保険証を持たない、事実上の無保険者も少なくありません。医療団体からは、受診抑制による重症化、手遅れによる死亡の実例が報告されており、国保の危機、国民皆保険制度の危機、県民の健康の危機といえる事態となっています。
こういう状況の中での、国保の都道府県化については、都道府県を司令塔にして、医療費の削減、保険料の引き上げが強権的に行われるのではないかと懸念されていることはご存知だと思います。
そこで、本県の国保の現状についての認識、および、国保の都道府県化によって、医療費の削減や保険料の引き上げが強権的に行われる懸念について、どのように考えておられるのかお尋ねします。
【医務国保課主幹(国保・福祉医療)】
まず、本県の市町村国保の現状の認識についてお答えします。
年齢構成は、平成25年度において65歳以上の高齢者が35.6%に達しており、全国(34.8%)と同様に加入者の年齢構成が高いと認識しています。一人当たりの医療費は、平成25年度で299,309円となっており、全国平均(324,543円)と比べて低く、40位となっています。所得水準は、平成25年度の所得200万円未満の世帯は72.1%、全国(78.5%)を6.4%下回っています。
保険料(税)は、平成25年度の一人当たり保険料調定額は97,976円、全国で高いほうから11番目、保険料収納率は92.96%で全国(90.42%)で高いほうから9位となっています。
次に、都道府県化による医療費の削減や保険料の引上げが行われる懸念についてです。
国によれば、今回の改革は、医療機能の分化、連携の推進、よぼう・健康づくりの推進を通じて、医療費の伸びの適正化を図ることを目指すものであり、また、3400億円の国保への財政支援の拡充により、保険料の伸びの抑制などの負担軽減が図られることとなり、各市町村の保険料の適切な設定に取り組んでいただきたいと考えています。県としては、今回の国保制度改革によって、保険料の引上げや医療費の削減が強権的に行われることにはならないと考えているが、国における制度の運用に問題があれば、知事会等を通じて国に働きかけていきたいと考えています。
【わしの恵子議員】
最大の問題は、国民健康保険料・税が高すぎることです。県内の中小企業団体のアンケート調査によると、消費税と社会保険料が経営と生活を圧迫しており、58.3%が国保料・税の引き下げを求めています。そういう国保を取り巻く厳しい状況のもとで、日本共産党は先のいっせい地方選でも、国保料・税の引き下げを公約に掲げました。
県は国保の都道府県化の前に、2014年度に廃止した市町村国保への県単独補助金を復活・増額して保険料・税の引き下げを実現すべきだと考えます。
本県は、国民健康保険事業費補助金について、2013年度の事務事業の評価では、「必要性高く、県民ニーズ増大、休廃止の影響大きい」とし、その理由については「国民健康保険事業は、年々医療費が増大する一方、産業構造の変化等により高齢者や低所得者の加入割合が増加し、大変厳しい状況にある。県は、保険者である市町村と国民健康保険組合に対し助言・指導監督する義務があり、健全運営を維持するために支援する必要がある」と評価しています。ところが国保への県単独補助金については、1997年度には、27億円の国民健康保険事業費補助金がありましたが、2014年度はとうとう0円になってしまいました。こんなことでいいのでしょうか。県の認識をお聞きします。
【医務国保課主幹(国保・福祉医療)】
国民健康保険事業費補助金は、福祉医療を実施することに伴って発生する医療費の波及増による保険者負担の緩和などを図るため、県独自の補助金として国保保険者に交付していたが、平成25年度の補助額が被保険者一人当たり24円と少額であり、補助金の申請等に係る事務負担や補助効果も考慮して、平成25年度限りで廃止しました。
廃止に当たっては、各市町村に平成26年度1月の時点で情報提供し、同年3月の市町村国保主管課長会議で改めて説明し、ご理解をお願いしました。
【わしの恵子議員】
県の補助金は、県の福祉医療実施にかかる国庫負担金削減の穴埋めに使われていたもの。もちろん国が地方自治体に対し、国を上回る制度を行っている自治体にペナルティをかけることが問題だとは思いますが、2013年度は一人当たり24円になったために効果が少ないという理由は説明がつかないという意見を申し上げます。
さらに、今度の国保の都道府県化は、市町村を保険料引き上げに駆り立てるのではないかと言われており、県が市町村に「標準保険料」を示したり、「納付金100%納付」を義務付ける恐れもあるので、過酷な保険料徴収強化につながることはやめるべきと考えます。
そこで最後になりますが、県がやるべきことは、保険料・税の抑制、引下げに力をつくすべきではないですか。県の考えをお聞きします。
【医務国保課主幹(国保・福祉医療)】
県としては、国民皆保険を支える重要な基盤である国民健康保険制度が、将来にわたって持続可能で安定的な形で運営されることが必要であると考えます。
今回の国民健康保険制度改革の見直しにより、都道府県が国保の財政運営の責任主体となり、国保運営に中心的な役割を担うこととなるので、県としては統一的な運営方針としての国保運営方針を示し、市町村が担う事務の効率化・標準化・広域化を推進や市町村における医療費適正化の取り組みに対する支援などを行うなど、安定的な財政運営や効率的な事業の推進に努めてまいりたい。
国に対しては、持続可能な国民健康保険制度の確立に向けて、今後の医療費の増嵩に耐えうる財政基盤の確立などを求めてまいります。
【わしの恵子議員】
県には県民の健康と暮らしを守る責務があります。国保の都道府県化にあたっては、国保の危機を深刻化させる保険料・税の引き上げへの圧力や誘導をしてはならないと重ねて申し上げおわります。