2015年5月 臨時議会本会議 【わしの恵子議員】
私は、日本共産党愛知県議会議員団を代表して、ただいま議題となっております第82号議案「平成27年度愛知県一般会計補正予算(第1号)」につて、反対の立場から意見を申し述べます。
この補正予算案は、県営名古屋空港の受け入れ拠点施設を整備するためのものです。県営名古屋空港周辺は、日本初の国産ジェット旅客機、MRJが生産される我が国唯一の地域となることから、生産の場という役割に加え、学校教育、社会教育といった人材育成の場、産業観光の場を目指し、見学者の受入拠点施設を建設するための実施設計を行うとともに、国道41号からのアクセス道路となる空港中央線の整備を行うものという説明がありましたが、受入拠点施設の整備になぜ県民の大切な税金を30億円も注ぎ込まなければならないのでしょうか。名古屋空港の民間旅客機用のエプロン(駐機場)を狭めてつくるものであり、事実上の「三菱博物館」と言わざるを得ません。
その上で2つの問題を指摘します。第1に、民間航空機YS11、MRJは三菱重工が製造しているものであり、特定企業の製品の展示施設を、県民の税金を使ってなぜ愛知県がつくるのかという問題があります。
すでに、三菱重工業は県営空港の隣の小牧南工場に一般公開の史料室をもっており、ここにはゼロ戦など三菱製の飛行機を展示していて「三菱博物館」と呼ばれています。このように、すぐ隣の三菱重工小牧南工場に一般公開の航空機博物館があるのに、今回なぜ同じように特定企業の製品を展示する施設に、今度は30億円を超える県民のお金を出す必要があるのか、納得できる説明はありませんでした。
そこで現在認定されているアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区の推進について考えてみたいと思います。愛知県においては特定の大企業である三菱重工業(株)などの航空機企業が、総合特区制度の優遇措置を受けられるということです。三菱重工業は1兆円を超える内部留保を溜め込んでいます。このような航空機の大手メーカーに対し、なぜそこまでの支援をしていくのか、私は理解できません。
さらに、同特区はアジア最大の航空宇宙産業の拠点化を目指すものですが、これは、アメリカのシアトルやフランスのツールーズに匹敵する航空宇宙産業拠点を目指すということになっており、やはり軍需産業都市となっているアメリカのシアトルやフランスのツールーズと同様、この地域も軍需都市化の恐れがあります。
今回、特区に指定されている三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場では、民間機だけでなく、軍用機もつくられています。また、航空自衛隊の次期戦闘機F35の製造ラインが三菱重工業の小牧南工場に設置されるということも言われております。従って名古屋空港の軍需化をいっそう進める恐れのあるアジアナンバーワン航空宇宙産業クラスター形成特区を推進する今回の提案には賛同できません。
第2に、「受入拠点施設」には、アジア太平洋戦争の旧日本海軍の主力戦闘機として、戦争末期には特攻隊として10代の若者を含む多くの若者が命を落とすことになった戦闘機「零線」の展示も検討されていることです。戦後70年、安倍政権は憲法9条を壊し「日本を戦争する国」につくりかえようとしています。日本が戦争か平和かを問われているときに、愛知県は若者を戦場に送らないという立場を示すべきです。日本共産党は、戦争美化につながるゼロ戦の展示は行うべきではないときっぱりと申し上げます。
最後に、愛知県営名古屋空港は、中部国際空港の建設・開港にともない同空港を小型機中心のゼネラルアビエーション飛行場として維持・拡充するために、県が巨額の費用を用いて国有地を買い入れて県営化した飛行場であります。
県民が県営名古屋空港に期待するのは、地方自治体である県が管理運営する公共飛行場として、平和・利便・地域振興に役立つ機能の充実であります。
こういう県民の願いとは逆行する今回の補正予算案には反対であることを表明して、日本共産党を代表しての討論とさせていただきます。