〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
大都市部における高層ビル対策について
【下奥委員】
決算に関する報告書53ページ「防災政策・啓発事業費」及び55ページ「災害対策事業費」に関連して伺います。
今、大都市部では、「再開発」や「都市再生」の名による超高層ビルの建設ラッシュや無秩序なまちづくりによって、雑居ビルや老朽木造住宅が混在し、災害の危険が増しています。愛知県でいえば、名古屋駅前を中心に高層ビル建設ラッシュとなっています。
国土交通省は、昨年、南海トラフ巨大地震に伴う長周期地震動により超高層ビルに被害が出る可能性が高いとして、太平洋側の大都市圏を中心とする愛知を含む11都府県を対策強化地域に指定すると関係自治体に通知を出しています。
巨大地震がいつきてもおかしくない今、高層ビルの災害対策強化が必要です。超高層ビルに関連する長周期地震動の対策がどうなっているのか、万全なのかどうか、現状について伺います。
【防災危機管理課主幹(政策・啓発)】
超高層建築物等に対する長周期地震動対策については、昨年6月の国土交通省からの通知に基づき、南海トラフ地震による長周期地震動の影響が比較的大きいと考えられる区域内に立地する県内の超高層建築物等67棟の所有者や管理者に対して、当該建築物を管轄する建設部建築指導課や名古屋市、豊橋市がリーフレットを配布し、長周期地震動に関する情報や建物内での家具の転倒・移動対策などの長周期地震動対策について周知を行った。
中山間地域への災害時の対策に万全を期す
【下奥委員】
大都市部は、地下鉄や地下街では火災や地震の危険だけではなく、豪雨の際には浸水被害がいつも話題になります。また、帰宅困難者対策もあります。こうした大都市部特有の災害へのいっそうの強化を要望しておきたいと思います。
一方、地方では、中山間地の災害対策が喫緊の課題であります。平成16年に起きた新潟中越地震では、脆弱な地質構造の山間部において土砂災害が発生し、各地で孤立集落が発生する事態になりました。
東三河地方のように、山林の荒廃が進み、山間地などの集落の維持が深刻な問題となっている。また、高齢化しているという問題もあります。さらに、市町村の広域合併で、住民と行政の距離をますます広げています。
中山間部では、孤立集落の被害状況の把握、救助・避難、物資供給等のためにヘリコプターを活用するなど、平野部とは異なる対応が必要だと思う。こういう中での中山間地での災害対策をどのように進めているのか伺う。
【災害対策課主幹(調整・支援)】
中山間地での災害対策についてである。
本県では、平成21年度の愛知県地域防災計画の修正において、中山間地等における孤立対策を追加し、孤立の恐れのある集落での通信の確保や救助活動体制の整備などの事前対策に取り組んでいるところである。平成22年度からは、緊急市町村地震防災対策事業費補助金の補助メニューとして、衛星携帯電話や無線機等の通信機器や救助活動等に活用するヘリスポット整備を追加し、市町村での体制整備について財政面での支援も行っているところである。
なお、現行の南海トラフ地震等対策事業費補助金においても補助メニューとなっており、平成26年度、27年度には、新城市でのヘリポート整備に補助を行っている。
【下奥委員】
この中山間地での防災対策では、集落の孤立化をいかに防ぐかが極めて重要だと言われ、とりわけ早めの避難によって道路が通行不能になる前に住民の避難を終えるかどうかが決定的だと言われています。
高齢者などへの安全を考えることも必要であります。一般的に避難勧告などの防災情報は防災行政無線で伝達されます。しかし、強い雨音や雷鳴でその音がかき消されたり、情報源としてのテレビは停電で見られなくなったりすることがよくあるそうです。ましてや一人暮らしや老夫婦2人の高齢者に防災情報の音が聞こえず情報が伝わらないことは大いにありえます。また、過去の事例では、情報は伝達されても自分だけでは避難場所に行くことができない高齢者が存在したという事実も見逃せません。
特に、高齢者が多く生活している中山間地域では、高齢者の安全と安心を確保するために確実に防災情報を伝えることが必要です。住民のこれらの対応を支援するために、行政は高齢者などへの避難準備や避難開始の情報を適切に発令し、連絡を周知することが大切だと言われています。
これらの点で、どのような具体的な対策をとっているか、また、今後の対策の報告について伺います。
【災害対策課主幹(調整・支援)】
災害時の情報伝達については、同報系防災行政無線による放送や各家庭で無線が受信できる屋内個別受信機の設置の他、広報車、サイレン、エリアメール、防災ラジオなど、様々な伝達手段があるが、既に県内の全市町村において複数の伝達手段が整備されている。
なお、同報系防災行政無線や防災ラジオなどの通信機器の整備についても、現行の南海トラフ地震等対策事業費補助金の補助メニューとなっている。
また、これらのハード面の整備に加え、高齢者の避難においては、地域での声掛けなども有効であるので、避難訓練等の機会を通じて県民への普及啓発を行うなど、ソフト対策についても併せて推進し、引き続き、災害時の情報伝達体制の確保に取り組んでいく。
【下奥委員】
過疎化が進む中でますます中山間地における防災対策の強化が必要であります。今後も市町村等への対策を進めるということだが、強化を要望しておきます。
また、設楽ダムなどの開発にあたっては、活断層の評価を含めた事前の防災アセスメントの導入による災害の危険を無視した開発行為の規制などが、防災を重視した国土づくりとして肝要だということを指摘しておきたいと思います。
次に、愛知県と県内6市は、古い耐震基準で建てた建造物のうち、ホテルや店舗など不特定多数の人が訪れたり、危険物を取り扱っていたりする大規模建造物476件の耐震診断結果の公表を行ったと思います。
そこで、その結果について震度6強の地震で倒壊または崩壊するおそれのある危険性が「高い」とされた件数と危険性が「ある」とされた件数をそれぞれについて、また、その内訳についても伺います。
【防災危機管理課主幹(政策・啓発)】
大規模建築物の耐震調査については、本県では建設部住宅計画課が、その他県内6所管行政庁が平成29年3月にその結果を公表している。その中で、倒壊または崩壊するおそれのある危険性が「高い」とされた件数は31棟で、また危険性が「ある」とされた件数も同じ数で31棟である。
危険性が「高い」とされた31棟の市町村別の内訳は、名古屋市が11棟で一番多く、次いで豊川市、犬山市、稲沢市がそれぞれ3棟となっている。次に、危険性が「ある」の方は、名古屋市が19棟で最も多く、次いで豊橋市、春日井市、豊明市がそれぞれ2棟となっている。
続いて、建物の用途別の内訳は、危険性が「高い」とされた31棟については、「百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗」と「危険物の貯蔵場又は処理場の用途に供する建築物」がそれぞれ8棟で一番多く、次いで「ホテル、旅館」が5棟となっている。次に、危険性が「ある」の方では、こちらの方も「「百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗」が7棟で最も多く、次いで「病院、診療所」が4棟となっている。
公共施設や住宅の耐震対策の強化を
【下奥委員】
次に、このように地震による被害を最小限にくい止めるうえで、学校などの公共施設や緊急輸送路沿いの住宅などだけでなく、病院や大規模集客施設をはじめ宅地を含めたすべての住宅の耐震診断と耐震補強を計画的に進めるとともに、そのための財政支援の強化が必要であります。
国は改正耐震改修促進法の施行とともに、民間の建物に対しても耐震改修費用の11.5%を補助する制度を作ったが、僅か1割程度の補助では「資金の足しにもならない」と感じる企業も多いのが現状です。
制度を上手く活用していくためにも、耐震改修を促進するために今後の基本方針について伺います。
【防災危機管理課主幹(政策・啓発)】
不特定多数の者等が利用する大規模建築物や災害拠点病院等の医療施設の耐震化の促進については、南海トラフ地震などの大規模地震を想定すると被害の軽減のため重要な対策である。
これらについては、第3次あいち地震対策アクションプランにおいても重点的に取り組む事項に位置付けそれぞれ耐震化に取り組んでいる。
防災局としては、アクションプランの進捗状況を毎年度きっちりと把握し、関係部局と連携してこうした取組を進めていく。
熊本の教訓生かした対策を
【下奥委員】
他部局との連携を強めて進めてほしいと思います。
次に、熊本地震からの教訓について伺います。
昨年4月熊本で2度の震度7の地震が起こり、甚大な被害をもたらした。この地震では、被害拡大・危機管理体制など、さまざまな“想定外”な事態が起こったといわれています。
こうしたことを教訓に、熊本地震による建築物の被害状況に基づき、耐震基準や耐震診断のあり方について検討を進めていると思いますが、アクションプランの中でどのように見直したかについて伺います。
【防災危機管理課主幹(政策・啓発)】
アクションプランの見直しについては、平成29年3月に「平成28年熊本地震の課題検証報告」を取りまとめ、これに基づき第3次あいち地震対策アクションプランの見直しも行ったところである。
建築物の耐震化に関する見直しについては、「私立学校施設の非構造部材の耐震対策の促進」を新たなアクション項目として追加した。
既存のアクション項目である「住宅の耐震化の促進」については、住宅の段階的耐震改修や耐震シェルター整備への補助制度の一層の活用により命を守る対策がさらに促進されるよう、これらの補助制度についてアクションプアランに追記した。
【下奥委員】
次に、地盤の液状化の問題もあります。
東日本大震災では東北から関東にかけて各地で地盤の液状化が発生し、27,000戸の住宅が被害を受けました。このため、内閣府が被災度の判定基準を示しました。そして、港の施設についても他県で地震の際、地盤液状化し被害に遭っています。この愛知も他人事ではありません。
そこで、地盤の液状化などへの対策についても、検討状況について伺います。
【防災危機管理課主幹(政策・啓発)】
平成25年4月に国土交通省が示した液状化対策に対する基本的認識として、「液状化により直接的には人命被害につながらないこと」、「対策費用が相当程度高額となることから調査・予測の精度や対策の効果には技術的な限界があること」などから、既存宅地を含め調査や対策を義務付けることは困難としている。ただ、被害抑制のためには個人、民間事業者等による対策の促進が必要だといった見解が示されている。
こうしたことから、本県では、平成26年5月に南海トラフ地震が発生した際の液状化危険度を公表するとともに、愛知県防災学習システムにおいて液状化危険度マップを掲載し、住所地等における液状化危険度を確認してもらえるようにしており、個人や民間レベルでの対策につながるように情報提供を行っている。
ライフラインの耐震補強
【下奥委員】
次に、日常生活にとって最も大切な設備である上下水道・電気・ガスといったライフラインの災害対策と災害危険箇所の調査についてです。
東日本大震災では広い範囲でライフラインが甚大な被害を受けましたが、被害の形態は各ライフラインや場所によって異なります。また、復旧の早さも同様で、水道や電気、通信は比較的早く数日で復旧できたのに対し、ガスは1カ月程度、下水道では仮復旧でも1カ月以上かかり、さらに液状化被害に関しては本復旧にはまだ1、2年かかるといった地区も多くあるようです。
そして、河川堤防などについては、東日本大震災では、広い範囲で多くの堤防が被災しました。
そこで、ライフライン施設など愛知県ではどうなっているのか。交通やガス・上下水道などライフライン施設、河川堤防、がけ崩れや土石流などの危険箇所、老朽化したため池など、災害危険箇所の調査・点検を行い、その結果にもとづき補強や防災対策を進められていると思います。これらの実績や到達点について伺います。また、今後の課題についても伺います。
【防災危機管理課主幹(政策・啓発)】
アクションプランにおけるライフライン施設に関する主な取組について回答する。
上水道については、県営浄水場施設の耐震化についてのアクション項目があり、浄水場の耐震化5か所、貯水池の耐震化1か所を目標として設定している。
これに対する実績は、浄水場については平成28年度に4箇所の耐震補強工事を実施、貯水池については耐震補強に向けた調査を実施したところである。
また、県営水道施設の整備推進についてのアクション項目については、広域調整池の整備6池、連絡管の整備2路線、基幹となる管路の複線化1路線を目標としており、実績は、西尾広域調整池の整備が完了し、他の5池については整備中となっている。また、連絡管や基幹となる管路の複線化については現在も実施中である。
次に、下水道については、流域下水道施設の耐震化がアクション項目であり、水処理及び汚泥処理機能の確保のための処理場施設の耐震化53施設、重要管きょの流下機能確保のための管きょ施設の耐震化0.9km、非常用自家発電設備の整備10施設を目標としている。
昨年度の実績は、処理場の耐震化6施設、管きょ施設0.3km、非常用自家発電設備の整備2施設である。
次に、河川・海岸堤防の耐震化については、農地海岸堤防の耐震化について、目標2.4kmに対し、平成27年度、28年年度の2か年で0.7kmの実績、河川堤防の耐震化については、目標57.2kmに対し、2か年で5.7km、建設海岸堤防の耐震化については、目標20.7kmに対し、2か年の実績で2.2kmとなっている。
次に、農業ため池の整備の推進については、目標87箇所に対し、2か年の実績は23箇所となっている。
土砂災害対策の推進に関しては、急傾斜地崩壊防止施設の整備については、目標53箇所に対し、2か年の実績で8箇所、土石流対策施設等の整備について目標59箇所に対し、2か年の実績で12箇所などとなっている。
今後の課題については、以上のアクション項目の取組は担当部局が全力で取り組んでいるものであり、防災局としては毎年実施しているアクションプランの進捗管理の中で担当部局と情報共有を行い、取組が推進されるように協力していく。
【下奥委員】
既設の地震に弱いライフラインをいかに耐震補強していくかが、今日の課題となっています。今、説明してもらいましたが、まだまだ進んでいないので、引き続き、担当部局と連携して取り組むよう、改善を求めます。
消防団員、消防水利の整備
次に、決算に関する報告書58ページ「2 消防団加入促進事業費」に関連して伺います。
大規模な災害発生にあたって、消防や警察などの救援部隊を全国的に派遣する体制は急速に整備されてきました。機能別消防団員が年々増加している一方、地域の防災対策を日常的に点検・強化し、災害発生時には被災者救助の中心的役割を担う市町村消防団の実情は、年々減少し団員の不足が常態化しており、広域化による市町村災害対策本部との連携や地理不案内による初動体制の遅れなどが懸念されています。消防車両の整備を含め、消防団員の増員や消防水利の整備など、消防力を強化することは地域の防災力にとって不可欠です。これら消防力の水準や強化の状況について伺います。
【消防保安課主幹(消防・予防)】
本県の消防力について、市町村等が消防の責任を果たすために必要な施設及び人員については、国の示す「消防力の整備指針」及び「消防水利の基準」を目標として、計画的に整備が進められている。
直近では、平成27年度に現状を調査しており、主なものの充足状況としては、まず、消防ポンプ自動車については、目標数602台に対し、現有数は577台で充足率は95.8%。次に、消防水利については、目標数65,663箇所に対し、現有数は52,543箇所で充足率は80.0%。また、消防職員については、目標数10,762人に対し現員数は8,096人で充足率は75.2%。消防団員については各町村の条例定数の合計25,551人に対し、現員数は23,203人で充足率は90.8%となっている。
これらの「整備指針」等の示す数値を目標に、各市町村にあって施設・人員の計画的な整備を進め、消防力の強化を図っている。
【下奥委員】
消防力の水準はとりわけ人員不足が深刻だと思います。今後、常備消防や消防団の一層の強化とともに、ボランティアを含めた住民の知恵と力を取り入れ、地域防災計画を見直し、高齢者や障害者、住民の安全な避難など地域の防災対策を強化することを強く要望します。
最近、局地的豪雨が特に増えており、この愛知でも被害が出ています。また、竜巻の被害もあった。そういった中で突風・竜巻や局所豪雨災害による被害の拡大を防止する上で、気象現象の的確な把握と住民の確実な避難を行うことがいよいよ切実に求められていることも申し上げておきたいと思います。
次に、決算に関する報告書57ページ「石油コンビナート等防災対策事業費」に関連して伺います。
東日本大震災では広域にわたり大規模な液状化が発生、千葉県など臨海部の石油コンビナートで火災・爆発事故が発生したが、石油タンクだけでなく地盤の耐震化、液状化対策も不十分なまま放置されている。伊勢湾などの臨海コンビナート地区の安全対策はとりわけ急務である。その防災対策について現状を伺います。
【消防保安課主幹(消防・予防)】
本県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として、名古屋港臨海地区を始め4地区が指定されている。このため県では、同法に基づき、知事を本部長とし、国や県、市町村、事業所代表を構成員とする「石油コンビナート等防災本部」を常設の機関として設置している。また、防災本部は「愛知県石油コンビナート等防災計画」の作成や、災害時における関係機関の連絡調整等を行っており、災害が発生した場合には、防災本部が中心となり、県、市町村、関係機関、及び特定事業所が一体となった防災対応を行うこととしている。
【下奥委員】
今後ともしっかりと連携し、一層の防災対策の強化を要望し、質問を終わります。