〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
精神障害者のバス運賃割引
【下奥委員】
「愛知県障害者差別解消推進条例」に基づく取り組みについて質問します。
これは障害者差別解消法が25年6月に公布され、28年4月に施行されることに合わせ、27年12月に県の障害者差別解消のための推進条例を制定したものであり、当然のことながら障害者権利条約の趣旨を踏まえたものと理解しています。
わが党のわしの議員が、一昨年12月議会に健康福祉委員会で質問をしていますが、その際特に、障害者間の差別解消の問題を提起し、具体的に精神障害者の社会参加を阻んでいる交通運賃割引における身体・知的障害者との差別解消を要望しました。その後、全国各地でこの問題の解消が図られ交通運賃割引の制度拡大が進んでいると聞いております。
精神障害者へのバス運賃の割引については、大きく改善されてきています。関東では総務省の関東管区行政評価局が、埼玉県内ではバス事業はすべて実施する一方、神奈川県では26社中2社のみと、地域間の大きな格差の解消を求める行政相談を受けて、改善を求める斡旋をしました。
この際、行政苦情救済推進会議の意見では(1)障害者基本法では、精神障害者と、身体・知的障害者との間の位置づけは同じである。(2)平成24年に改正された標準運送約款が規定する精神障害者への割引運賃の適用について、地域間で大きな差異が生じていることから、こうした地域間の格差の解消が課題である。(3)てんかんや認知症などの障害を持つ運転者による死傷事故の増加と、その対応として各都道府県警察本部による運転免許の取り消し処分が増加している実情を踏まえ、そうした障害者へのバス運賃の割引など何らかの配慮が必要と思われる。(4)地方公共団体の福祉所管部局の中には、各地域のバス協会を始め、事業者に対し、割引運賃の導入に向けた働きかけを行った結果、割引を実現した者があり、このような事例は大変参考になる、と述べています。
愛知でも、どのように充実が図れてきたか、愛知における精神障害者へのバス運賃の割引の現況について詳しくご説明ください。
【こころの健康推進室長】
精神障害者に対する運賃の割引について、バス事業については、平成24年7月に一般乗合旅客自動車運送事業標準運送約款の一部改正が行われ、その中で、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者が追加されたこともあり、現在、県内に自主運行路線を有する乗合バス事業者9事業者のうち、2事業者を除く7事業者において精神障害者に対する割引が実施されている。
【下奥委員】
バスはかなり改善が進みましたが、鉄道などはほとんど進んでいないのが実態です。鉄道についての割引制度がいま現状はどうなっているか伺います。
【こころの健康推進室長】
県内に路線を有する鉄道事業者等は9つあるが、平成27年度までは精神障害者に対する運賃の割引制度を実施しているところはなかった。その後、平成28年4月に名古屋市交通局はじめ3事業者が割引を実施し、その後、平成28年7月からはリニモを営業する愛知高速交通も割引を実施しているので、現在、精神障害者に対する割引制度を実施している事業者は4事業者、実施していない事業者は5つとなっている。
【下奥委員】
愛知県障害者差別解消推進条例の中で、あげている4つの基本理念の中で「すべての障害のある方が、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」も掲げています。その理念のもと、社会参加への機会をつくることにつながる交通運賃割引の拡充を図っていくことが必要です。
そこで伺います。鉄道も含めて精神障害者の方も利用しやすいものとなるよう割引制度の拡充を進めて欲しいと思いますが、県当局として、どのように取り組んでいくのか、伺います。
【こころの健康推進室長】
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律においては、精神障害者保健福祉手帳制度が平成7年度に創設されており、この手帳制度は、手帳の交付を受けた者に対して各方面の支援策が講じられることにより、精神障害者の自立や社会参加の促進を図ることを目的としており、手帳所持者に対する公共交通機関の運賃の割引もその支援策の一つと認識している。
この精神障害者保健福祉手帳については、従前は写真を貼り付ける欄が設けられておらず、手帳所持者の本人確認が困難であり、したがって割引等を受けにくいという実態もあったことから、平成18年10月には、運賃の割引等を受けられやすくするよう、手帳に写真を貼り付ける欄を設けるという見直しが行われた。
一方、障害者に対する運賃割引の実施は、法令等に義務付けがなく、各公共交通事業者の判断で行われている。
したがって、県としては、手帳に写真貼付欄が設けられたことを踏まえ、精神障害者についても、身体・知的障害者と同等に、公共交通機関の割引の対象とすることを関係機関に強く働きかけるよう、国に対して従前から要望しているところであり、今後も、引き続き、国に対する要望等、精神障害者に対する割引制度の拡充について、関係部局とも連携して取り組んでいきたいと考えている。
【下奥委員】
愛知県も含めて全国的にも進んでいないのが現状で、鉄道会社は157社のうち割引実施が約3割の52社にとどまっている。身体障害者、知的障害者については9割が実施していて、大きな開きがあります。精神障害者団体からは「障害種別間の格差を是正してほしい」という声があがっています。
まずは、愛知県が関与している都市型セクターの鉄道から割引制度を実現するよう強く要望する。
差別解消の一つの具体的課題について申し上げましたが、事業の到達点と成果、実績、さらには今後の課題について説明していただきたいと思います。
障害者差別解消について、手話言語・障害者コミュニケーション条例もその一つですが、実績と成果及び問題点や今後の課題について伺います。
【障害福祉課主幹(地域生活支援)】
昨年10月の条例制定後、平成28年度は、普及啓発リーフレットの作成配布や、シンポジウムを開催し、県民に、障害の特性に応じた配慮や対応するコミュニケーション手段の例などをお知らせした。
また、障害者基本法に基づく障害者施策審議会に専門部会として障害者コミュニケーション部会を設置し、聴覚障害者、視覚障害者、知的障害者、自閉症団体に加え、ALS、失語症の関係団体といった様々な障害当事者に参加いただき、幅広く意見をお聞きする会議を開催し、県の施策に反映する体制整備を行っている。
問題点や今後の課題としては、専門部会委員からも意見をいただいているが、県民の障害特性に応じたコミュニケーション手段の認識がまだ十分とは言えない状況があると認識している。
このため、昨年度に引き続き、条例制定の趣旨を広く県民に伝える取組をしっかりと進めてまいりたい。
【下奥委員】
障害者差別解消のための推進条例、手話言語・障害者コミュニケーション条例ともに評価できるものでありますが、依然としてまだまだ問題点や課題等が多くあります。今後とも障害者の権利が十分に守られ、差別解消が大きく前進していくことを強く要望します。