〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団〕
2017年3月9日 議案質疑 第5区分(建設費)
海抜0m地帯 住民生活の安全を求める
第9款 建設費 第3項「河川海岸費」について伺います。
この予算案は、可決された後に国の建設予算の配分を見ながら実施箇所を「箇所付け」し、執行されると思いますので、そのことを念頭に質問します。
2015年2月に作成された「愛知県市町村津波避難計画策定指針」では、災害基本法改正により同法第49条の4の規定に基づく「指定緊急避難場所の指定」を定めています。指定緊急避難場所とは、「被災住民が一定期間避難生活を送る避難所とは別に切迫した危険から難を逃れる場」であり、「市町村が所有する公の施設にとどまらず集合住宅やオフィスビルなど民間が所有する建築物」も指定し、周辺住民の迅速な避難が可能となる場の確保を定めています。
海部地域の海抜ゼロメートル地帯では、弥富市をはじめ7つの自治体で津波避難計画の策定を必要としています。2014年8月の中日新聞は、「想定シリーズ」として「津波」を3回連続で報道していますが、その2回目で「高度経済成長期の無計画な地下水のくみ上げで地盤が沈下した海抜ゼロメートル地帯」を特別に取り上げています。「まさか!川の堤防が・・・」「揺れ収まる前に浸水」の見出しをつけて、伊勢湾沿岸に地震発生の一時間後に到達する津波の前に、河川堤防が液状化して堤防ごと沈み込むこと。そして地表よりも川底が高い「天井川」から滝のように水が流れ落ちてきたと想定した記事を掲載しています。この地域は、激震による激しい揺れ、河川堤防の消滅による浸水、そして、震源地から届く大津波と3つの恐怖を想定しなければなりません。
県の被害想定は、河川海岸堤防の液状化を加えたために、ゼロメートル地帯の被害想定を全体の45%に当たる約1万3千人とし、これは国が想定した約2倍に及びます。浸水津波での建物崩壊は国想定の8倍の2万2千棟、深さ1cm以上の浸水面積は3倍以上の350平方キロメートルに及びます。
「愛知県市町村津波避難計画策定指針」の策定から2年が経ちました。指定された海抜ゼロメートル地帯の7自治体はそれぞれ一生懸命努力されていますが、地域全体が海抜ゼロでかつ平坦地のため、場所の指定に困難を極めています。
先日、蟹江町にある命山「希望の丘」を案内していただきました。旧蟹江高校の校舎を活用した避難所とグランドに盛土した命山です。避難所にはいろいろな設備も整いしっかりしたものでした。こんなところがこの地域にたくさんあれば住民の安心感が十分に得られると実感しました。
しかし、現実はそこまでいきません。
わが党の地方議員から緊急避難場所の指定状況について意見をききました。弥富市の議員は、「『30分以内に浸水が来るなら2階に避難するぐらい。それでだめならあきらめる』『家族のためにできることはライフジャケットを買うぐらい』等と、市民は心配している」と回答がありました。大治町の議員は、「町内の4小中学校の運動場が指定されているが、津波・浸水には対応できない。町の対策に限界がある」。また、津島市の議員は、「緊急避難所は地元企業などと協定を結んでいるが、圧倒的に数が少ない。学校も含め高い建物の外付け階段、屋上に避難場所などの設置が求められる」。愛西市の議員は「『近くの避難場所に逃げても、高さは家と同じで避難にならない。どこに逃げれば』、『高台やビルが近くにない』などの声が聞かれます。」と答えています。
2011年の東日本大震災、昨年には熊本地震が起こり、県民の地震に対する関心と不安は極めて大きなものになっています。東海地震は1854年の安政東海地震以来150年間起きておらず、国が予測する発生確率としては、30年以内に東海88%、東南海70%、南海60%となっています。多くの県民は「いつ起きてもおかしくない」と考えています。
堤防の耐震津波対策は喫緊の課題
この地域で暮らす住民の不安を解消する決め手は何でしょうか。もちろん、緊急避難場所の確保は急がなければなりません。同時に、「第3次あいち地震対策アクションプラン」で掲げる「河川・海岸堤防の耐震化等の推進」の早期実現を図ることです。
2014年6月の県議会で、建設部長は、「地震により堤防が崩壊、あるいは沈下することで、ゼロメートル地帯を中心に浸水が広がる被害予測が示されました。この調査結果を踏まえれば河川・海岸堤防の地震・津波対策は、この地域にとって喫緊の課題であります。とりわけ、地震により堤防が沈下し、津波到達前に浸水することが想定されており、この浸水を防ぐ対策が住民の方々の避難時間を確保するうえで大変重要となります。堤防の補強や水門の改築などの耐震対策を引き続き進めていきます。」と答弁しています。
海部地域には、河川の水門や排水機場があり、アクションプランには県下のこれらの施設の耐震化も位置付けられています。また、アクションプランでは、2015年度から9年間の計画期間で、例えば、河川堤防の耐震化を57.2km実施することにしており、昨年公表されたアクションプランの実績では初年度2015年度では3.1km、実施率5%に留まっています。繰り返しますが、県は3年前の県議会で「喫緊の課題」と答えています。しっかりと進めていただきたいと思います。
そこでお尋ねします。「喫緊の事業」ということですが、第3次あいち地震対策アクションプランに位置付けた県下の河川堤防や河川の水門、排水機場の耐震化を今後どのように進めていくつもりなのか伺います。
2011年の東日本大震災での津波被害、一昨年の鬼怒川での大水害、昨年は岩手県や北海道での水害などが続いています。堤防で囲まれた海部地域では、いったん浸水するとなかなか水が引かず、不安がいっぱいです。
そこで二つ目の質問です。ゼロメートル地帯の海部地域において、自然災害に対し、住民の安全・安心を確保するために、平成29年度予算ではどのような河川整備を行っていくのか伺います。
要望
お答えいただきました。国の予算の配分はこれからだと考えますが、住民の安全・安心を確保するために、早急に河川の整備や、河川堤防、河川の水門、排水機場の耐震化をしっかりと進めていただくよう要望して終わります。