〔未定稿:文責 日本共産党愛知県議会議員団〕
パリ協定について
【下奥奈歩委員】
2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みを定めた「パリ協定」が11月4日に発効しました。世界の90カ国以上が批准を済ませ発効の条件が整ったためです。世界第5位の温室効果ガス排出大国の日本の批准が発効に間に合わず、7日からモロッコのマラケシュで開かれた締約国会議にも正式に参加できなかったのは重大です。
急激な気候変動や生態系の破壊を引き起こしている地球温暖化を抑制することは、人類社会の切実な課題です。
そこで、まず伺います。90カ国以上が批准を済ませる中、日本の批准がパリ協定発効に間に合わなかったことについて、県はどう考えますか。異常な遅れであるという認識はありますか。
【地球温暖化対策室長】
パリ協定の締結については、10月28日の参議院、11月8日の衆議院での可決・承認を経て、同日に受諾書を国連本部に提出したとのことである。
モロッコで開催されたCOP22に出席した山本環境大臣は、帰国後の衆議院環境委員会において、批准が発効に間に合わなかった影響は何もなかった趣旨の答弁をされているところである。
【下奥奈歩委員】
国の答弁ではなく、県として、環境を守る立場でどう考えるかということです。異常な遅れであるという認識があるかどうかをお答えください。
【地球温暖化対策室長】
繰り返しとなるが、環境大臣が帰国後、「影響は何もなかった」と答弁しているところである。
【下奥奈歩委員】
今の答弁は、質問の答えになっていません。
真剣に環境のことを考えてないですし、全く心配もしていないという重大な答弁です。異常だと言えないことが異常だと思います。各国が批准をすませるなか、日本が発効に間に合わなかったことは異常な遅れというべきことです。
次に伺います。「環境首都あいち」を目指そうと大村知事はぶち上げていて、COP13にまで出かけていく。そういう環境をスローガンとして売り出す愛知県から国に対して、早急に批准するように働きかけをしたのでしょうか。答弁を求めます。
【地球温暖化対策室長】
自然エネルギーの普及・拡大を目的に平成23年に設立され、全国34の道府県で構成する自然エネルギー協議会に、本県も正会員として加盟している。この協議会では、「国際交渉の場での日本の発言力を確保し、世界に積極的に貢献するため、早期に『パリ協定』の批准手続きを取ること」を求める政策提言を10月7日付けで政府に提出している。
【下奥奈歩委員】
県として、批准を早期にするよう働きかけをしたのでしょうか。
【地球温暖化対策室長】
県が正会員となっている協議会で批准の手続きをとる提言を政府に出しているところである。
【下奥奈歩委員】
「パリ協定」は、合意から一年足らずの間に、中国・アメリカ・欧州連合(EU)加盟国などが批准を終え、世界の総排出量の55%以上、55か国以上という発行の条件を達成しました。日本が発効までに批准できなかったのは、こうした世界の流れ、地球温暖化を何としても食い止めるんだという流れに逆らうものです。
石炭火力発電について
【下奥奈歩委員】
次に、今、国内で石炭火力発電の新増設が環境省資料によると平成28年度11月時点で、39カ所、2,050万キロワットとなっている。2,000万キロワットを超える規模での新増設の計画は極めて大きいものである。
そしてその新増設計画に前回の委員会で質問した、愛知県の武豊火力も含まれている。このことは確認できるのか。答弁をお願いします。
【環境活動推進課】
国内の石炭火力発電の新増設計画には、中部電力株式会社武豊火力発電所も含まれていると承知している。
【下奥奈歩委員】
前回の委員会での質問のときに、答弁で「最善の利用可能技術を導入するなど、より一層の環境影響の低減について検討するよう求めている。」といわれました。
しかし、どんな技術を用いても温室効果ガス削減にはなりません。さらに、石炭火力は最新型のIGCCとUSCという従来型のものがあります。武豊火力は、このUSCという従来型であります。どちらの技術にしても、天然ガス発電の2倍のCO2を排出する規模とされています。
そこで、伺います。石炭火力というもっとも大量の温室効果ガスを発生させる石炭火力発電の新設計画は、愛知県の目標である、2020年度における温室効果ガス削減量を1990年度比で15%削減という目標との整合性がとれるのかどうか、この点について、県はどう考えるか、答弁を求めます。
【環境活動推進課】
武豊火力発電所リプレース計画については、既設の石油火力発電施設が老朽化したことから、より効率の高い石炭火力発電施設を設置するものである。
この計画については、学識経験者からなる愛知県環境影響評価審査会の意見を踏まえ、環境影響評価法に基づき、環境影響評価方法書、これは環境アセスメントの項目や方法を示したものであるが、この方法書に対して、本年3月に知事意見を提出している。
この知事意見において、環境の保全に関する最新の知見を踏まえ、最善の利用可能技術を導入するなど、より一層の環境影響の低減について検討すること、また、国の二酸化炭素削減の目標と整合するものとなるよう、実効性ある取組を検討することを求めているところである。
【下奥奈歩委員】
整合するものになるようという答弁でありましたが、整合が適合ととれるのかは曖昧です。国会ではわが党の塩川衆議院議員の質問に対して、環境省は「全国の新増設計画全て実現した場合、わが国の2030年の削減目標を7500万トン超過する」と指摘しました。排出量が大幅に超過するということは環境省がすでに認めています。明らかな重大問題であり、愛知県も含め、極めて深刻な事態です。「環境影響の低減」という言葉は通用しません。
再度、きちんと答弁を求めます。
【環境活動推進課】
本県としては、2022年の運転開始を目指している武豊火力発電所リプレース計画について、国が示した2030年度の二酸化炭素削減の目標と整合するよう、実効性のある取組を求めているところである。
【下奥奈歩委員】
環境省が大幅超過になると言われたのに、県が認めない。そういう答弁しかできない。そういう態度ではいけないと思います。
石炭火力発電所の新増設計画というのは、温暖化対策にとって極めて深刻なもので、温室効果ガス削減に逆行しているものと思いますが、県の認識を伺います。
【環境活動推進課】
先ほども述べたが、本県は、石炭火力発電所である武豊火力発電所のリプレース計画に対して、本年3月に提出した知事意見におきまして、最善の利用可能技術を導入するなど、より一層の環境影響の低減について検討することを求めるとともに、国の二酸化炭素削減の目標と整合するものとなるよう、実効性ある取組を検討することを求めているところである。
今後、中部電力株式会社は環境アセスメントの結果を、環境影響評価準備書として取りまとめることとしていることから、本県としては、この準備書に対して、環境影響評価審査会の意見を聴きつつ慎重に審査し、適切に意見を述べていきたいと考えている。
【下奥奈歩委員】
温室効果ガス削減に逆行しているものと思いますが、それについての愛知県の考えをきいています。もう一度答弁をお願いします。
【環境活動推進課】
環境影響の低減を求めていくことが肝要であることから、本県といたしましては、こうした視点から意見を述べていく。
【下奥奈歩委員】
環境省は「CO2排出量の多い石炭火力発電の新増設が制約なく進むと、国の削減目標等の達成が危ぶまれると考えております。」と国会で答弁しています。「制約なく」という言葉は入っていますが、削減目標の達成について危惧しています。また、CO2排出量の多いことも認めています。
県は逆行しているということに対しても答弁できないという、本当に情けないと思います。
不名誉な「化石賞」の受賞
【下奥奈歩委員】
次に、国際環境NGOは17日、気候変動対策に消極的な国に贈る「化石賞」のうち、1,2位を日本に贈り、脱炭素化の障害となる石炭火力発電推進姿勢を糾弾しました。国連気候変動枠組条約第22回締約国、COP22で発表されました。「化石賞」とは、地球温暖化対策に対する姿勢が積極的でない国などに対して非難と皮肉を込めて授与される賞で、化石という名称には、温室効果ガスを発生させる化石燃料という意味と、化石のような古い考え方との批判の意味も込められています。
そこで伺います。地球温暖化対策の前進を妨げている国に日本が選ばれたことについて県としてどう考えるか、答弁を求めます。
【地球温暖化対策室長】
我が国が化石賞を受賞したことの具体的な理由については、報道の範囲でしか承知していない。2030年度に2013年度比で26%の温室効果ガス排出量を削減するという我が国の目標は、GDP当たりの排出量を4割以上、国民一人当たりの排出量を約2割改善しようとするものである。国はこの目標について、世界最高水準を維持するものであり、国際的にも遜色のない野心的な目標であるとしている。
【下奥奈歩委員】
きちんと聞いたことに応えていただきたいと思います。
県として、化石賞の一位と二位を受賞したんです、今回、そのことについてどう考えるかもう一度答弁をお願いします。
【地球温暖化対策室長】
先ほど委員の発言がありましたように対策が遅れているところに化石賞を贈るということでありますが、我が国が掲げている目標は国際的にも遜色ない野心的な目標だということでしっかりと温暖化対策していくということですのでそういう認識だ。
【下奥奈歩委員】
そういう県の認識は間違っていると思います。
受賞国に対して、NGOは声明で、日本を含めて化石賞を受賞した国が石炭を採掘、推進し、各国の気候変動たいSカウを「文字通り掘り崩している」とうったえました。
次に、化石賞受賞の理由にもなっていますが、日本は、温暖化対策の新枠組み、パリ協定に批准しながら、温室効果ガスである二酸化端をの排出の多い石炭に依存し、石炭火力発電技術を海外輸出する矛盾した行動をとっています。
そして、この愛知県も、国言いなり、追随で石炭火力計画を推進し、化石賞受賞に手を貸し、悪い意味で貢献しています。これは、脱石炭という世界の流れに逆行するものです。
そこで伺います。環境首都愛知という名にふさわしく、環境を守る立場に立つのなら、パリ協定を批准した今、地球温暖化に歯止めをかけるため、環境や人への健康被害をもたらすもとになる、百害あって一利なしの石炭火力推進から手を引き、計画を白紙を含め見直すべきではないでしょうか。答弁を求めます。
【地球温暖化対策室長】
石炭火力発電所を立地する場合には、電気事業法の規制がかかる。従って、事業の可否については、経済産業省が判断するもので、県は事業の可否を判断する立場にはない。
県の役割としては、環境影響評価手続の中で、環境影響評価法に基づき、環境の保全の見地から意見を述べることで、事業の賛否を表明するものではない。
武豊火力発電所リプレース計画に対する知事意見において、さきほどから国のCO2削減目標と整合するよう、実効性ある取組を検討することを求めているところある。
今後の手続の中で、中部電力が提出する準備書に対し、審査会の意見を踏まえ、環境保全の見地から適切に意見を述べていく。
【下奥奈歩委員】
質問に対してそのような答弁では、本当に国言いなりなんだと思います。
石炭火力を熱心に推進し続ける知事の姿勢は、歴史逆行であり、凝り固まった考え方で、化石の知事だと言われても仕方ありません。
次に、石炭火力を推進し、環境破壊の一翼を担う知事が、生物多様性条約第13締約国会議に出席するということについて質問します。
まず伺います。生物多様性条約とはどういうものか。簡潔に答えてください。
【自然環境課主幹】
生物多様性条約とは、1992年の「環境と開発に関する国際連合会議」、いわゆる「地球サミット」のときに署名が開始され、1993年に発効された条約である。
条約の目的は、大きく3つあり、➀生物多様性の保全、②生物多様性の構成要素の持続可能な利用、③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分である。現在、世界194か国並びに欧州連合(EU)及びパレスチナが加盟している。
【下奥奈歩委員】
説明の中にも1番、2番、3番とありましたが、最初に触れた中に「生物多様性条約」は個別の野生生物種や、特定地域の生態系に限らず、地球規模の広がりで生物多様性を考え、その保全を目指す国際条約です。
愛知県の推進する石炭火力は地球温暖化を加速させるものです。生物多様性の保全へも大きな影響を与える要因となります。
その一つは気象条件で海水温度の上昇により、サンゴ礁が死滅。二つ目は、海面温度上昇により干潟が壊滅。三つめは、生物間相互作用の変化で、海水上昇で外部の温度により体温が変化する変温動物である魚類は、適した温度を求め、海の深く潜っていき、結果、海面近くの魚がいなくなり、海鳥のエサがなくなる。他にも暖冬で種類によっては、花の開花ができないなどがあります。生物多様性保全に逆行することになります。
また、愛知県は大型開発や大規模イベントが多く、2005年に開催された愛知万博会場整備では、オオタカの営巣の減少、自然植生のシデコブシやモンゴリナラなど6000本物気が伐採され、ギフチョウ、ハッチョウトンボなどの生息数も大幅に減りました。
さらに、愛知県内の特定の河川環境でしか生息していない天然記念物ネコギギ(ナマズの一種)の生息環境を奪う設楽ダム建設を進めようとしています。
加えて、レッドリスト(絶滅の恐れのある野生動物の種のリスト)あいち2015によると、植物50種、動物24種が絶滅していて、絶滅の恐れがある種は、植物511種、動物337種となっています。どちらも、前回の2009年の数字よりもさらに増えています。
そこで伺います。今述べてきたように、愛知県の姿勢は、生物多様性の保全に相反するものです。COP13への出席については否定するものではありません。ですが、生態系破壊への道を進むという姿勢なのに、大村知事がCOP13に出席する資格はあのでしょうか。
また、地球温暖化を加速させる石炭火力を推進しながら、COP13に出席するというのは、矛盾した行動ではないでしょうか。
【自然環境課主幹】
本県では、2010年に、生物多様性条約第10回締約国会議いわゆるCOP10が開催され、生物多様性に関する世界の目標である「愛知目標」が採択された。
このため、本県では、この目標の達成に向けて、平成25年3月に、「あいち生物多様性戦略2020」を策定し、多様な主体の連携による生き物の生息生育空間をつなぐ「生態系ネットワーク形成」などの施策を推進している。
更に、本県は、「愛知目標」が採択されたCOP10の開催地として、目標の達成に向けて世界をリードしていく役割があると考えているので、このため、今回、知事がCOP13に参加し、海外の5つの広域自治体と連携をして、世界の広域自治体の生物多様性保全の取組の活性化を図っていくものである。
【下奥奈歩委員】
世界をリードする愛知が、生物多様性の保全に逆行しています。矛盾した行動と思われるが、このことについてどう考えるか答弁を求めます。
【自然環境課主幹】
愛知県としては、「愛知目標」が策定されたCOP10の開催地として、世界をリードしていきたいという思いで、取り組んでいきたい。
【下奥奈歩委員】
「世界をリードする愛知」と言えるように、環境政策を抜本的に変える必要があると思われます。大村知事の政策は、生物多様性に反する行動であり、COP13に出席する資格があるとは思われません。生物多様性保全と地球温暖化対策は車の車輪のように密接に関係しています。石炭火力を推進しながら、一方で、COP13に出席する知事の行動は明らかに矛盾しています。
最後に、申し上げます。石炭火力推進をやめ、脱炭素への道に切り替え、省エネを進め、再生可能エネルギーの普及へと大きく舵を切ることを求めます。そして、COP13に出席する環境首都愛知の名に相応しく、大型開発を今すぐ見直し、本気になって環境を守る立場に立った環境政策をすることを強く求め、質問を終わります。