〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局〕
県民無視・議会軽視の進め方に異議あり
【下奥奈歩委員】
第87号議案 平成28年度愛知県一般会計補正予算 第20回アジア競技大会招致推進費について伺います。
第20回アジア競技大会を愛知県へ招致するために補正予算6650万円が臨時議会に計上されています。臨時議会に補正予算で突然こんな議案が出てきたことに驚きました。
アジア競技大会は、競技数35 参加選手16000人というオリンピックに次ぐ規模の大きいプロジェクトです。招致段階からと開催に向けて16000人に対応する選手村をつくることや、500億、700億といわれる運営費を負担すること、などお金もかなりかかる重要な問題です。
それを、県民の理解と納得が得られてない中で、行政本位で勝手に決めてしまうのは、県民無視であり、あってはならないことだと考えます。なによりも県民が主人公で、国民・県民の立場にたって県民へのアンケートやパブリックコメントを行い、意見を聞きながらすすめるのが本筋ではないでしょうか。十分に県民の声を聴くべきではないでしょうか?
答弁を求めます。
【スポーツ振興課主幹】
・アジア競技大会については、県議会において、リニア中央新幹線開業前後の開催が非常に効果的であるとの議論がなされ、本年度の当初予算では、アジア競技大会などの国際的スポーツ大会の開催可能性を検討するため、「国際的スポーツ大会開催可能性検討調査費」を認めていただいた。
・こうした中、本年2月議会閉会後の3月29日に、JOCから2026年開催予定の第20回大会の開催について、立候補を希望する自治体は、5月13日までに「立候補意思表明書」を提出するようにとの募集があった。
・これを受け、「国際的スポーツ大会開催可能性検討調査費」を活用してアジア競技大会の開催可能性の検討を進め、県民の代表である知事と、名古屋市民の代表である市長が共同で立候補することとしたものである。
・今後の招致・開催の取組を推進するにあたっては、県民の理解を得て活動を盛り上げていく必要があると考えているので、大会開催の意義や効果についてわかりやすく説明して、県民の皆様にご理解・ご賛同いただき、私どもの活動にもご参加いただけるよう取り組んでまいりたい。
【下奥奈歩委員】
本来、このような大規模プロジェクトは事業計画や財政負担計画など明確にしたうえで、県民アンケートなどで県民の声をよく聞いて、慎重に決定する必要があるのは当然。1988年名古屋五輪誘致のときには名古屋市と県が約18300人を対象に世論調査を行っています。今回の進め方はあまりにもずさんでトップダウンのやり方であり認められません。
また、今回の議案について、県民の声を聴かないばかりではなく、議会も軽視されています。議会で議論される前に今月11日にアジア競技大会開催構想策定業務委託の公募が行われ、さらに今月13日に立候補意思表明書が提出されてしまいました。県民の声を無視して、議会も軽視して日程ありきで進められています。論議もしないで、進めてしまえば、議会の議論がいらなくなってしまいます。県政の自殺行為であり、議会制民主主義の観点からいっても重大な問題です。議会が、形だけのものとなってしまいます。県民無視、議会軽視2重に酷いと思いますが、この点について答弁を求めます。
【スポーツ振興課主幹】
・3年前、地域政策課にスポーツ事業振興Gが設けられ、全国・世界に打ち出せるスポーツ大会を招致・育成し、地域活性化につなげる取組を進めてきた。そして、昨年4月には、スポーツ大会を活用した地域振興を地域の関係者が連携して推進するための組織として、「あいちスポーツコミッション」を設けた。
・こうした国際スポーツ大会の招致に向けた事業については、先ほど申し上げた本年度当初予算の「国際的スポーツ大会開催可能性検討調査費」も含め、必要な予算を県議会にお諮りし、ご了解をいただいており、国際スポーツ大会を積極的に活用して地域活性化を図るという方針については、県議会としても十分ご理解いただいている。
・また、今回の開催構想策定費等については、5月13日の立候補意思表明書の提出後、すみやかに本日、県議会にお諮りしている。
【下奥奈歩委員】
行政が議会よりも上から目線で暴走していて、非常に異常な状況だと思います。
アジア大会招致にはこれからどんどん招致活動のために予算が膨れあがることが想定されます。東京では五輪招致費が150億円にまでふくれあがりました。過去に名古屋五輪構想があったときには招致活動で約2億円費やしたということがいわれています。
さらに、招致が決まれば、冒頭でもお話したように500~700億円といわれる大会運営費の大きな負担もあります。また、瑞穂競技場の改修工事には、約500億円かかると報道などでいわれています。
また、愛知県は経済効果を期待していますが、2014年インチョンアジア大会では、バラ色の経済効果だと市が期待をして取り組みましたが、結果残ったのは、借金ばかりでバラ色の展望は夢で終わり財政再建団体に指定寸前という記事がありました。このように、県民の税金の無駄遣いになることが想定されます。
こういう大型イベントは、それ自体の財政負担だけでなく、それを口実にさらに大型公共事業が膨れ上がる危険があります。
福祉や、教育、県民のくらしが苦しいのにそっちはお金がないと突き放すのに、一方でアジア大会にはお金を注ぎ込もうとするこういう逆立ち県政ではいけないと考えますが、どうでしょうか。答弁を求めます。
【スポーツ振興課主幹】
・招致予算については、今後の招致スケジュールを見極め、効果的な招致活動を検討し、必要な予算があれば、県議会にお諮りしていく。
・また、「大型公共事業の予算が膨らむことも考えられる」とのご意見であるが、老朽化し国際競技基準に適合しない瑞穂陸上競技場は名古屋市が建て替える予定であるものの、そのほかの施設については、できるだけ既存の施設を活用する方向で検討している。
【下奥奈歩委員】
アジア競技大会開催を理由に、大型開発に走り、環境破壊と浪費を拡大する恐れもあります。ちなみに、20年ほど前の広島で行われたアジア競技大会では、競技施設の建設や、空港や新交通といった大会関連事業費合わせて約1兆4600億円もかかっています。さらに今回、断念した福岡県は、昨年10月から試算をして結果、財政確保は困難と判断した。また、地元経済界も賛成しなかったという理由があるそうです。14日付の「中日新聞」も財政負担が課題だと指摘しています。財政負担問題は極めて重大な問題です。
今こそ税金の使い道を考える時
【下奥奈歩委員】
次に、今、熊本県を含めて九州地方では先月14日に起こった地震により、亡くなられたかたや被災されたかたがたくさんいます。まだまだ余震が続き、不安な日々を過ごしています。被災者の生活環境の整備、仮設住宅を早急に建設すること、住宅再建への公的支援など、被災者の希望第一に必要な支援をすることが急務です。大事なことは、熊本地震への支援に愛知県も今まで以上に力を尽くすことです。同時に、改めて愛知県の防災対策の強化が必要になっていることです。
今回熊本の地震は震度7の地震が2度起きて、震度6を含む1400回を超える連続地震という経験したことがない地震による被害が起きています。今の耐震基準は、連続地震は想定されていません。京都新聞によると、「今回のような地震に耐えるためには、現行の耐震基準より、5割増しの強度が必要、今の基準では1回の震度7に耐えることしか想定されていない」と報じられています。
従来型ではなく、熊本のような連続地震を想定して早急に耐震基準の見直しをはじめ、従来型の地震対策を抜本的に強化することが県政の急務となっています。この愛知県は近い将来、南海トラフなどの連動型の大地震が襲う可能性が高いことも指摘されています。
いま、お金を使うところは県民の安全・安心を確保するための防災・福祉の愛知づくりに力を尽くすべきではないでしょうか。こんな災害の大変なときに知事が、まず行くべきは、テキサスなどアメリカよりも被災地である熊本であり、教訓を汲み取るべきです。こんなときに、アジア競技大会開催の招致に県民の税金を使うべきではないと考えます。優先順位が違うのではないでしょうか?答弁を求めます。
【スポーツ振興課主幹】
・県民の安心安全や防災・福祉に関する施策が重要なのは言うまでもない。しかし一方で、そうした施策を十分に実施するためには、本県が経済的にも発展することが必要である。
・アジア競技大会の開催は、交流人口を拡大させ、国際競争力を高め、成長著しいアジア地域との強固な連携の構築につながるなど、本県が経済的な発展を遂げるために必要な施策と考えている。
・更に、アジア競技大会の開催は、スポーツの一層の振興に寄与するとともに、多くの人々を感動させ、子どもたちに夢や希望を与えることなどから、愛知を活力と豊かさに満ちた地域へと発展させる施策として、県民の安心安全や防災・福祉に関する施策と同様に重要であると考えている。
【下奥奈歩委員】
税金の使い道が間違っています。大規模展示場をはじめ、西知多道路など、公共事業がふくれあがっており、この上の負担は無謀であると言わざるをえません。
スポーツ振興・平和への友好の理念はどこへ?
【下奥奈歩委員】
次に、このアジア競技大会の開催の意義について非常に問題があります。立候補意思表明書の資料に開催する意義について、4項目が掲載されています。リニアを世界に発信して、愛知 名古屋の交流人口を拡大して、国際競争力を高める。東京に対抗する日本のセンターとしてブランドを確立する・・・というようなことが書かれています。これを読む限りでは純粋なスポーツ開催を行うための招致とは思えません。
スポーツは、アジアを含めた世界平和の理念やフェアプレーの精神、友情や尊敬といった考え方で進めるべきものだと思います。ですが、文章の中には「平和」「友好」といった言葉が一切出てきません。大義がない開催招致です。ヒト・モノ・カネを呼び込むためにアジア大会があるわけではありません。
県民が望むのは、暮らし、福祉優先の県政と地域に寄り添った振興、若者支援とスポーツ施設の整備や県民本位の立場にたったスポーツ振興です。大会招致そのものを見直し、アジア各国との平和と友好を促進も含め有意義なものにするために、県民参加で再検討を行うべきと考えますが、答弁を求めます。
【スポーツ振興課主幹】
・今回招致するアジア競技大会については、日本全体の成長への貢献や交流人口の拡大、国際競争力の向上等に寄与することに加え、一流の競技を間近で見ることができ、これがきっかけになってスポーツへの関心や意欲が刺激され、県民の間でスポーツが普及するきっかけにもなると考えている。
・さらに、アジア競技大会は、そもそもOCA憲章にもあるとおり、「国際的な尊敬、友情、親善、平和および環境の促進に寄与」するという理念に沿って開催するものであり、アジアとの平和や友情の促進につなげていくのは当然と考えている。
・今後とも、アジア競技大会の意義や効果について、県民の皆様に十分ご理解いただき、招致や開催に向けて、県民の皆様にも参加していただけるよう取り組んでまいりたい。
【下奥奈歩委員】
経済発展は大事なことですが、県民のくらし向上、民生安定こそ県政の最重要課題です。逆ではありませんか。経済発展も県民のくらしを支援しながらすすめなければなりません。
最後に、わが党県議団は、純粋なスポーツ振興としてアジア競技大会そのものには賛成です。しかし、アジア競技大会招致にむけて無駄遣いが広がり県民への負担が大きくなることが予想されます。そうなっていけば、被災地や防災対策、社会保障、福祉が置き去りにされてしまうのではないでしょうか。いま、県がやるべきは、熊本地震を教訓にした防災対策の抜本的強化であり、県民の立場にたって福祉、暮らし、最優先の県政を行うことを強く申し上げまして、質問を終わります。