〔未定稿 文責:日本共産党愛知県議会議員団事務局〕
【下奥奈歩委員】
リニア中央新幹線建設について質問をします。愛知県は「平成28年度国の施策・取り組みに対する愛知県からの要請書」のトップにリニア中央新幹線を載せています。しかし、その要請書の中に、リニア計画に対する住民からの不安の声が一切かかれていません。また、「愛知ビジョン2020」では、リニアインパクトで世界の中で存在感を発揮する中京大都市圏を大きく掲げています。こうして愛知県は、リニア中央新幹線を積極的に推進して、開業を求める立場にたっています。
しかし、リニア中央新幹線建設にはさまざまな問題があります。問題が解決もされていない、住民の不安もあるリニアに対して愛知県は、推進する態度ではなく、県民の不安に寄り添い、県民の立場に立つべきと私は、かんがえます。そのことを強く申し上げ、質問にはいります。
リニアは、総額9兆円ともいわれる巨額の建設費を投じて、これまでよりも高速で都市を結ぶ輸送方法ですが、これに多くの人が必要性を感じていません。国土交通大臣がJR東海にリニア中央新幹線建設を指示した2011年5月27日前後で行われた、リニア建設推進の国土交通省交通政策審議会中央新幹線小委員会のパブリックコメントに対して「整備に反対、計画中止または再検討すべき」という回答が全回答の73%に達しています。
愛知の県民からは、「リニアが地下を通ったら、亜炭廃坑の中を地下水が入って均等を保ってきた土地のバランスが崩れて陥没するのではないか?」春日井の地域住民からは、「地下水脈が寸断されて、水の流れが変わったり、水源が枯れたりするという不安がある。」という声や、工事に関しての騒音、振動にたいしても不安の声があがっています。
また、リニア事業がすすむことで、立ち退きとなる可能性が高い地域の方からは、「動きたくない。」「おじいさんの代から住んでいるから、私一人になっても動かない。」と立ち退きに強く反対をしています。
JR東海は、県民に対しての説明会を開いていますが、説明会を途中で終わるなど、責任を果たしているとはいえません。
県民は、夜も眠れないくらいの不安でいっぱいです。県は、この県民の不安の声に寄り添い県民の立場にたって、JR東海や、国に対して、説明責任を果たすこと、さらに計画の白紙撤回を含めて、内容見直しを求めるべきではないでしょうか。亜炭廃坑や立ち退きの問題と指摘したこと合わせて答弁を求めます。
【リニア事業推進室長】
昨年度の工事実施計画認可後に名古屋市・春日井市で開催されましたリニア事業説明会などにおきまして、亜炭廃鉱による陥没の恐れ、工事の排水や地下水脈、工事車両による渋滞など、県民の皆様から様々な不安、意見などが寄せられたことは承知しております。
本県といたしましては、今後予定されている工事説明会などでより詳細について説明してもらうなど、JR東海に対してしっかりと要請してまいります。
次に、リニア中央新幹線整備に対する県の考えでございます。リニアは、全国新幹線鉄道整備法に基づく事業として国土交通大臣が整備計画を決定し、工事実施計画が認可されたものであり、その開業により、東京・愛知・大阪の時間距離の大幅な短縮による各地域間の交流・連携の強化、わが国の国際競争力の向上等の面において、大きな貢献が期待される重要な社会基盤であります。
本県においても、このリニアが、中部国際空港、新東名高速道路などとともに交流の基盤となる広域交通ネットワークを形成し、本県の経済・社会に大きな波及効果をもたらすことが期待されております。
こうしたことから、本県では、リニア沿線の9都府県で構成する建設促進期成同盟会、または県単独でリニアの早期整備につきまして、国、JR東海に要請しております。
【下奥奈歩委員】
さらに「愛知ビジョン2020」の中では、南海トラフの巨大地震がいつ起きてもおかしくない状況にあり、30 年以内にM8以上の地震が起きる確率は60~70%としています。リニア建設の意義についてJR東海は、東海道新幹線の大規模改修や災害時の代替路線の確保としていますが、東海道新幹線の改修工事中にも、運休していないこと、無数の活断層を横切るリニアが東海、東南海、南海地震に耐えられるとは考えにくく、リニアが代替路線となりえず、建設の根拠はまったく成り立ちません。
た、リニア走行中に大地震など災害が起こった時に時速500㎞で走るリニアは、取り返しのつかないことになります。運転手のいないリニアは乗務員頼みであり、避難は、暗いトンネルを1000人が2㎞以上も歩いて地上にいくことになります。多重防護をしたはずの日航機は墜落し、原発も爆発事故を起こしました。また、2015年4月3日に起きた青函トンネル発煙トラブルでは、124名の乗客が非難を余儀なくされ、脱出完了までに5時間半余りかかり、大きな負担を強いられました。青函トンネルも世界一長い海底トンネルといわれているトンネルです。大深度地下を通り、86%がトンネルの超高速のリニアも同じ運命をたどる可能性があると考えます。何か起こったときに、県民の命が危険にさらされる危険のあるリニアを積極的に推進する県の責任は余りにも大きいのではないでしょうか。答弁を求めます。
【リニア事業推進室長】
リニア中央新幹線の安全性に関する質問ですが、リニア中央新幹線での災害・事故につきましては、国土交通省の「超電導磁気浮上式鉄道 実用技術評価委員会」において地震などの自然現象、火災などにおける異常対応の評価がなされております。
その後、リニア中央新幹線の整備計画等が審議されました交通政策審議会の平成23年5月の答申では、「異常時の対応」として、「超電導リニア方式は、地震や大深度地下での火災等の異常時における安全確保について、整備計画段階での対応方針が示されており、その内容が委員会において確認されている。」とされております。
鉄道の対処すべき災害の代表的なものとして、地震対策がございます。地震の場合、極力初期の段階で地震を検知し、緊急停止できるかでございます。これについては新幹線で実績のある早期地震情報システムの導入が謳われております。また、構造物の耐震設計については阪神・淡路大震災以降に強化された、国の新しい耐震基準に従って行うこととしており、この基準により東日本大震災では東北新幹線で補強をした部分は、大きな被害を受けていなかったとのことです。
また火災対策については、施設・車両の不燃化・難燃化のほか、発生時における迅速かつ安全な旅客の避難について、詳細な避難誘導方法をJR東海において検討されるということで聞いております。
言うまでも無く交通事業にとって「安全」は最重要であり、県としても機会をとらえ、安全対策の充実をJR東海に求めてまいります。
【下奥奈歩委員】
災害時の避難について、JR東海は5キロごとに設けられた非常口から脱出するとの説明がされていますが、運転手もおらず、乗務員の数も不明な中本当に安全に避難ができるのでしょうか。ハンディキャップをお持ちの方や、高齢者の方の対応はどうするのかなど不明な点が数多くあります。南アルプスの地下トンネルで事故が起きれば地上に避難することは並大抵なことではありません。
「あいちビジョン2020」の中で言っているように「地震がいつ起きてもおかしくない状況」という認識があるのなら、危険を伴うリニア中央新幹線は県民の命を守るためにも、計画を中止させるべきではないでしょうか。
愛知県の県庁内に「リニア推進室」をつくり、県民の声を無視して、大企業の方を向いて危険性のある事業を積極的に推進していることは異常だと感じます。JR東海側の立場ではなく、県民側の立場に立って県は、県民の不安にこたえるべきです。
また、県が県民の暮らしと安全を守る任務にたつのなら、リニア中央新幹線建設は全くその任務とはずれていると考えますが、いかがでしょうか?答弁をもとめます。
【リニア事業推進室長】
リニア中央新幹線建設に限らず、大規模なプロジェクトを行うに際しましては、工事の安全や環境保全に万全を期すこと、事業や工事内容を県民の皆様に丁寧に説明していくことが必要と考えております。
工事の安全、環境の保全、県民への丁寧な説明に関しましては、事業主体であるJR東海に対して引き続き求めてまいります。
先ほどと重なるところもございますが、県といたしましては、リニア中央新幹線は、三大都市圏間の速達性向上や新たな大動脈の形成を担うプロジェクトであり、各地域間の交流・連携の強化、わが国の国際競争力の向上等の面において、大きな貢献が期待できる重要な社会基盤と考えております。
2027年度に予定されるリニア名古屋開業は、我が国の国土構造に大きな変化をもたらすもの、本県がそれにより形成される5千万人規模の大交流圏の西の拠点の強みを発揮して、より一層飛躍をしていくためにも、生産基盤や交通基盤など更なる充実を図ることが必要と考えています。地元自治体としてJR東海と連携・協力してリニア中央新幹線の整備推進を図るとともに、このリニア開業の効果を経済・社会に広く波及させ、本県の発展に繋げていくことが県としての役割と考えております。
【リニア事業推進室長】
県といたしましては、あくまでリニア中央新幹線という大きなプロジェクトを推進するにあたりまして、工事の安全や環境の保全に万全を期し、事業や工事の内容の県民への説明を丁寧にしていただくことをJR東海に求め、事業をしっかりと進めていただくというスタンスでございます。
【下奥奈歩委員】
さらに重大な問題は、リニア中央新幹線による、地方衰退が懸念されていることです。「あいちビジョン2020」のなかでも、「首都圏との産業活動や観光面の交流が活発になる一方、首都圏へのストロー現象が懸念され、地域の強みを生かした戦略的な地域づくりが求められる」と書いてあります。首都圏への対抗策として、「名古屋を中心とする、産業集積のための交通網整備」「中部国際空港や、名古屋空港の機能強化、国際交流基盤整備」など、名古屋中心部への集中です。また、豊田市、瀬戸市など40分交通圏の形成などです。他の地域を切り捨てにした、地域格差の拡大につながるものです。
愛知県政は久しく、名古屋市周辺部に対して、以前から「西高東低」と批判がありました。西高東低県政によって、東三河は地方衰退、人口減少の問題を抱えて今日に至っています。この格差をさらに広げて名古屋のリニア関連事業、再開発により、ますます名古屋中心になってしまい、東三河は陥没してしまいます。リニアでは、豊橋を含む東三河に住む県民にとって、真の振興につながるとは考えられず、むしろ東三河の衰退を加速させる危険が大きいのではないでしょうか。
地域振興というのなら、6月議会で私が東三河ビジョンについて質問をした若者支援と中小企業支援、農業支援など、県民の福祉、暮らし充実させて、もりあげていかないと、東三河の将来はありません。本当に消滅してしまいます。県は県民の暮らしを守るという立場に立つべきです。
県として、新たな地域間格差を生み出さないと言えるのですか?リニア建設が具体的にどのように東三河県民の福祉や暮らしなどの地域振興につながっていくのか、東三河の将来展望をどう切り開いていくのか、お答えください。
【地域政策課主幹(地域振興)】
東三河の振興についてでございますが、本県では、リニアの開業効果を、より広域的に波及させるために、鉄道ネットワークの充実・強化による名古屋駅から40分交通圏の拡大や、広域道路ネットワークの整備を進めていくこととしております。
また、広域観光の推進や、スポーツ大会の育成・誘致などにも取り組み、県内各地に人の流れを呼び込むことを行っています。
とりわけ東三河におきましては、広域的な移動を支える東海道新幹線や、岐阜県中津川市、あるいは長野県飯田市に設置されるリニア中間駅の活用により、新たな人の流れを生み出し、地域の活性化につなげていきたいと考えております。
そうした中で、東三河では、リニアの開業も見据えて、バランスのとれた産業構造や、豊かな自然、歴史・文化など地域の高いポテンシャルを最大限に発揮していくための地域づくりの指針として「東三河振興ビジョン」を策定するとともに、そのビジョンの実施計画となる「主要プロジェクト推進プラン」を毎年作成して、先導事業の実施などにより推進をしております。
今年度は、「地方創生事業の広域展開」をテーマとするプランの策定を進めており、具体的には、東三河県庁により、東京圏の東三河出身の学生を対象とする東三河企業への訪問や、学生のインターンシップ受入、農工商様々な起業支援セミナーの開催など、東三河に若者を呼び込むための取組を進めております。
【下奥奈歩委員】
残念ながら、県民の立場に立った答弁をきくことはできませんでした。これだけ多くの問題と不安を抱えて、国民的要望も大儀もないリニア中央新幹線計画について、白紙撤回を含めて抜本的に見直すべきであり、県として、最初に申し上げましたとおり、JR側ではなく、県民の立場にたって意見を述べることを強く求めます。
最後に、大村知事は、先般発行した「愛知が起こす成長革命」という本の中で、「2027年度のリニア開業は、愛知の成長にとって起爆剤」と述べて、「名古屋駅の利便性の向上」「『AICHI』『NAGOYA』の知名度を世界に知らしめる絶好の機会」を強調しています。ここには、私が、9月の一般質問で指摘した、「全国最低水準の福祉、くらしの施策」に真摯に向き合っていない姿勢があります。リニア中央新幹線で大企業応援の振興ではなく、県民に寄り添い、県民の福祉、暮らしを充実させることと、若者が希望をもてる地域振興を県として検討していくこを強く求めまして、質問を終わります。